第三期誕生秘話


【新たなる支配者】

コナミ株式会社A会議室、某月某日 深夜23時。
廊下まで響く怒鳴り声は、やがて静かになっていった。
「ガシャーン!」
営業担当は乱暴に扉を閉めて、後ろも振り返らずに
足早に去っていった...

テーブルの上には、飲み掛けのペットボトルが散乱、
灰皿には無数のタバコが刺さっている。

「お〜い!...どうするよ...」
企画部チーフは天井を向きながらつぶやく。
「そうですねぇ...もうネタ切れですか...」
床に散乱する資料を拾いながら、サブチーフが答える。
「ペガサス・ストラクは外れだったからねぇ...在庫の山どうするよ」
「そうですねぇ...最近はコンビニでも置いてくれませんしねぇ」
「スピリットもイマイチ。残ったのは悪名高き八汰烏だけでしたね」
「ファンタジー系は軽すぎてダメなのかなぁ...」
「もう、強いカード出尽くしたから、考えるだけ無駄だよ!」
「遊戯王OCGもついに第二期で終了かぁ...」

「あの...フィールド魔法を中心にしてみてはどうでしょうか?」
それまで、隅の方で放心状態だった新人社員Mがポツリと呟く。
「だめだめ、いまさら属性デッキもないだろう!」
「違います!攻守500UPで、このカードが場にある時、墓地のカードを
操作するカードが使えない!その名も王家の谷〜ネクロバレーでは!」

「墓守?...マリクか!?」
チーフの顔に生気が蘇ってきた...
「そうです!しかもフィールド・サーチ魔法も入れちゃいましょう!」
「地球全体をフィールドに、テラ・フォーミング!」 SF好きのサブチーフ。
「そうそう、ついでに手札のモンスターを全て捨てる、王家の生贄!」
「いいねぇ、いいねぇ...墓守シリーズ、これで決まりだね。
M君!早速、遊戯王有力HPで人気モンスターをリサーチして似せるんだ」
「はっ!了解です。」

「おおっ...イマジネーションが湧いてきたぞ〜、黒板消しの罠!」
「地獄の扉越し銃はどうでしょう!」 シューティング好きのサブチーフ
「絶対不可侵領域!」 戦闘機シミュレーション好きのチーフ
「拷問車輪はどうでしょう?」 SM好きの(以下略w

夜を徹して延々と会議は続いた。
かくして、遊戯王は第三期新時代を無事迎えることが出来たのだった
...めでたし、めでたし


【ユニオンの降臨】

「おい!舞君起きろ!起きろってば!!」
激しく肩が揺すられる。
「ふわぁ〜。うほほ〜い!」
机の上に長い髪を放り投げていた舞ちゃんが、奇声と共に伸びをする。
「ようやく、お目覚めかね...」
寝ぼけまなこが、企画部チーフの空ろな視線と合って、またも奇声。
「うひぃ!チーフ...殿...?」
ここでは甘えの表情は通用しないことを本能的に知っている。
さてどうしようと思い、チーフをちらっと見ると、再び固まっていた。
「チーフ殿、また、煮詰まってたんですかぁ?」

コナミ株式会社A会議室、某月某日 深夜0時。
テーブルの上には、飲み掛けのペットボトルが散乱、
灰皿には無数のタバコが刺さっている。
チーフはネクタイを捻りハチマキにして、机の上に両足を投げ出す。

「今回も通常モンスターを登場させるかどうか議論してたところだ!」
「もう、通常モンスターは要らないと思うけどなぁ...」
何故か、プラモデルを組みながら、会議に参加している副チーフ。
「そうですね。使えないカードは捨てられる運命にありますしね」
前回の企画で大活躍した若手社員M君がすかさず同意する。

「今まで登場させた通常モンスターはどうするんですかぁ?
通常モンが消えるのは寂しすぎますぅ...」
舞ちゃんの発言。ここには、とても社会人と思えない独特の
しゃべり方を気にする人間は誰もいない。
「とは言っても、通常モンが存在する意味ないからねぇ...」
再びチーフ。何の重みもない発言である。

「う〜ん...と、じゃあ、意味を持たせれば良いのではぁ?」
「ん??」
参加者全員の視線が舞ちゃんの突き出した人差し指に集まる。
「おぉ...」
舞ちゃんの人差し指はホワイトボードに書かれたカード名を指している。
「大革命かぁ...!?」
「素材にするなら、やっぱりマイナー属性ですよね。炎、水...風かな?」
若手社員M君の頭脳にスイッチが入ったようだ。
「まず、「逃げまどう民」通常モンスター レベル2 炎 炎 600 600」
「次に、「弾圧される民」 通常モンスター 3 水 水 400 1400」
「最後に、「団結するレジスタンス」 通常モンスター 3 風 雷 1000 400...」

「あっ...真ん中のはレベル1で守備力も2000で良いんじゃない?」
何も考えていないチーフが口をはさむ。
「はぁ?レベル1で守備2000ですか?」
「うん。水モンスターって守備2000って感じするでしょ?」
「はぁ...(また始まったよ...」

「は〜い!うほほ〜い!舞ちゃんテキスト考えましたぁ!」
いつものように、元気に手を上げる。
「君はアラレちゃんかね?...」
チーフの歳がバレる発言は、舞ちゃんとM君には通じないぞ!w

「「大革命」 通常罠自分のメインフェイズで自分のフィールド上に「逃げまどう民」「弾圧される民」「団結するレジスタンス」が表側表示で存在するときのみ発動可能。相手の手札を全て墓地に送り、フィールド上の相手がコントロールするカードを全て破壊する。...それから素材はこれね♪」
「いつも苦しみに耐えているが、いつか必ず革命を起こすことを心に誓っている。いつの日か自由を手にする事ができると信じて日々の生活に耐えている。強大な力に立ち向かう誓いを交わすために集結した人々。ね?革命の日は近いって感じするでしょ?」

「...」
会議室を沈黙が支配する。
「舞君!?君って...一体...何者??」
副チーフが恐怖に顔を歪ませる。
「えぇぇ 舞ちゃんですけどぉ...」

「まあまあ...詳細は後で決めるとして、次行こう 「波動キャノン」?何?」
いつものようにチーフが止めに入る。
「これです!」
副チーフが指差した先には、組み立てていた宇宙戦艦ヤマトのプラモデル。
「ヤマトの波動砲をイメージしてみました。」
副チーフは胸を張る。
「効果は?」
「考えてません...」
「...おぃ!」

「は〜い!こんなのどうでしょ?「波動キャノン」永続魔法 フィールド上のこのカードを自分のメインフェイズに墓地に送る。このカードが発動後に経過した自分のスタンバイフェイズの数×1000ポイントダメージを相手に与える。」

「舞君!...君は天才だ!!」
感極まったチーフは、舞ちゃんに歩み寄り、右手を両手で握りしめる。
「あの...チーフ!?」
「なんだい?舞君」
「次回のシリーズのテーマって「ユニオン」じゃありませんでしたっけ?」
「うん、そうだよ」
「7時間経って、まだ「仕込みマシンガン」「パイナップル爆弾」「降格処分」
「覇者の一括」「大革命」「波動キャノン」の6枚しか決まってませんけど...
良いのですかぁ?趣味に走り過ぎではぁ?」

「......」

さあ、夜明けまでは時間があるぞ、頑張ろう!


【黒魔導の覇者】

●第1話 伝説の『あしたのジョー』】

「おい!舞君!...どうした!?舞君?」
いつものように、企画室チーフが舞の肩を叩く。
舞は長い髪と両手を机の上に投げ出し、ピクリとも動かない。
「ふっふっふっ、舞の奴...目を回してますぜ!」
何故か舞に恐れを抱いている副チーフが、ニヤリと笑う。

「無理もないか...2日連続徹夜は初めての経験だからなぁ」
「初めて経験...ですか?」
会議室の隅っこで固まって動かないM君が、
何故か「ぽっ」と頬を赤らめる。

コナミ株式会社A会議室、某月某日 深夜0時。
テーブルの上には、飲み掛けのペットボトルが散乱、
灰皿には無数のタバコが刺さっている。
チーフは目を回して動かない舞を心配そうに見つめる。

「はひぃ!...はっ...はっはっ...」
「ん?」
チーフが舞の後ろから、顔を覗き込んだ刹那!
「腹へったぁ〜〜〜!!」
「ぐはぁ!」
突然起き上がった舞の石頭がチーフのあごに直撃!
チーフは膝を付き、ゆっくりと床に崩れ落ちる。
「あっ、すいませ〜ん!大丈夫ですかチーフ?」

「まるで、、力石...徹?」
隅の方から、M君がぼそっとつぶやくのを
舞は聞き逃さなかった!(キラン☆
「それだぁ!!」

ビシッとM君を指刺しながら、舞は続ける。
「力石...パワー・ストーン...漆黒のパワーストーンですよ!」
「はぁ?強引過ぎないか?」
気を失ったチーフを助け起こしながら、副チーフは呆れ顔。

「あっ!なるほど〜」
M君の瞳がぱぁっと輝きだす。
明晰な頭脳にスイッチが入ったようだ。
「マジック・ストーン...いや、マジック・カウンターか?
つまり、カウンターを載せる魔法使い族がカウンターを
消費することにより、対抗魔術を...そして...」

「おぃ!M!今、難しいこと言われてもさぁ...」
副チーフに支えられ、上半身だけ起き上がり、
チーフはかったるそうに続ける。
「腹減りすぎて頭働かないから、居酒屋行って
飯でも食いながら、続きしよ〜ぜ!!」

「おっ...ようやく飯にありつけるのか!」
「やったぁ♪ラッキー♪」
「はぁ...まぁ...」

はて、さて、居酒屋での会議はどうなることやら...
本日はこれまで!続きは、また明日!乞うご期待!


●第2話 会議は踊る

「乾杯〜♪」
大ジョッキをテーブルの中心で合わせて、
乾いた喉に一気に流し込む。
「ぷはぁ...極楽、極楽...それにしても
いつも座敷が空いてるよなぁ。指定席か?」
チーフは上機嫌だ。

「と言うより、隔離されているような...」
つぶやいているM君を押しのけ、舞がお酌に来る。
「チーフ!この刺身も新鮮で美味しいですよぉ
あ〜んして、あ〜ん...」
「はい、舞ちゃ〜ん...」
30男の猫なで声はちょっと...怖い?

「いつものことながら、チーフは酒飲むと人格
変わりますねぇ!舞ほどではないが...」
小皿に箸を突っ込みながら、副チーフは苦笑する。
「おっ?...このゴマ和え旨いぞ!」

「ゴマ?黒ゴマ、白ゴマ...ふむっ」
スイッチが入ったままのM君が眼が輝いて見える。

「略して、黒マ、白マ...そうか!?
主力★4モンスターは黒魔術師、白魔術師!
いや、白はむしろ、魔導師か?
攻守は反対で、黒がブラックマジシャン用で
白がバスターブレイダー用だな...うん!
攻1900で、守は15...サーチ出来るとまずいか?」

「何が不味いって?Mよ!まあ、飲め」
「はぁ...」
気が進まないMは、恐る恐るお猪口を差し出す。
「もう日本酒ですか?ペース早いような...」
「まあ、聞け!」
チーフはMの前であぐらをかき、
一升瓶を足元に置いて続ける。

「あれだけ苦労して考えたユニオンのことだが...
散々な結果に終わって、飲まなきゃやってられん!」
「はぁ...(効果を考えたのは全部舞さんですが...」

「私は合体ロボ感覚が好きだなぁ...X−Y−Zの
ベクトルの知的な感じがなんともはや...(よいしょ!」
副チーフは焼酎に梅干を入れながら口を挟む。

「そうか?(喜 しかしなぁ...聞いてくれ(哀
昨日カードショップに息子を連れてリサーチに行ったら
墓守使ってる奴はいたが、ユニオンは1枚も見なかった。
くっそ〜墓守は意地でもモンスターは出さんぞ!
そして、絶対にユニオンを出してやるぞぉ!!」
チーフは真っ赤な顔で、上半身をゆらゆらさせている。

「M君、社会人には暗黙の了解ってものがあるのだ...」
副チーフはM君の肩を叩き、耳元でつぶやく。
「確かに君が考えた墓守の評判は良かったし、優秀さは
認める。これ見よがしに仕事をするな!謙虚さが大切だ!」
「はぁ...社会人ってそういうものですか?
2年目の僕にはちょっと理解が...」

「うほほ〜い!おい!チーフ!飲んでるかよ!?」
チーフの首に舞のウエスタン・ラリアット炸裂!
一発で、泡を吹いて倒れるチーフ。
「なっ...」
血の気を失ったM君の横で副チーフがつぶやく...
「まずい...飲ませすぎて、舞君の別人格『裏舞』
を召還してしまった...!」
「にゃ!にゃ〜」
「うっ...裏拳?ぐはっ!」
続いて副チーフがチーフに折り重なって倒れる。

「えっ?...アマゾネスの拳(剣)士??」
裏舞の前に、一人残されたM君の運命はいかに!


●第3話 気になる...

「がおー...ガルル!」
舞は両手をネコ手にして、Mにじりっじりっと近づいてくる。
「虎?アマゾネスの虎...いや可愛いからペット虎かな?
早速、メモしておこう...」
おぉ Mは意外と動じないタイプだぞ!w

「シャー!!」
舞がMに飛び掛ろうとした、その瞬間!
ふっと照明が落ち、座敷を暗闇が包んだ。
「ブレイカー落ちたのかな?ん?ブレイカー...壊し屋?
そうか!モン効果によるサイクロンは強いかも!イイ!」

3分後に照明が灯った。スイッチに手をやりながら、居酒屋
の店長がMにウィンクしている。
「なるほど!そういうことね。助かった。
ところで、舞さんはどこだ?」

舞は座敷の隅の方で、うずくまりながら震えている。
「ふぇ〜舞ちゃん、暗いの苦手ですぅ...」
「何故に両手を頭上に立てているのか?ネコ耳...族?」
「うおぉ イマジネーションが湧いてきたぞぉ!」
Mは両手を突き上げ咆えた!アマゾネスの格闘戦士?(マテ

(中略)

「うぅ...もう朝か?頭痛い...」
副チーフは、伸びをしながら回りを見回す。
チーフを一升瓶を抱えながら、舞は大の字になって、
Mはテーブルにうつ伏せになって寝ているようだ。

ふと、Mのあごの下の紙に眼を止め、近づいてみる。
Mを起こさないように、ゆっくりと抜き出す。
黒魔導のカード名と効果案がびっしりと書かれている。
最後の行が滲んでいるのは、よだれだろうか?

「チーフ!起きてください!」
「むぅ?」
「Mが新カード案を作りましたよ!」
「おぉ...やったか?流石だ!信じていたよ!」

「ありがとうございます。」
いつの間にか起きていたMが頭を下げる。
「...予定数より2枚少ないが...わざとか?」
「はい、その2枚はチーフにお任せします。どうぞ、
お好きなユニオン・コンボを加えてください。」
「成長したな!M!」
副チーフはMの肩をポンと叩き、目頭を押さえる。

「それなら、とっておきのアイデアがある。それは...
ずばり!懐かしのパロディウスのアイツとコイツだ!」
「はぁ?...」
「水★10・攻200守100 と 炎★5攻100守100で
全国の決闘者にリベンジだ!!」
「えぇぇ...」
「ユニオン・コンボで3000の貫通効果だぞ!
デザインも俺が考えてある...これでどうだ!?」
お尻のポケットからくしゃくしゃの紙を取り出し、
誇らしげに広げる。

「......」

そこには、紙飛行機に乗った赤いマネキンと同じく
紙飛行機の上で芸をしている青いマネキンが書か
れていた...ように見える。

「デザインはとにかく、一体、どんなデッキに
なるんでしょうか?」
Mも副チーフに激しく同意!
「それも考えてある。変なデッキの専門家。
『海さんの部屋』の管理人にお願いする」

「...もっと、駄目じゃん!」


海:「おぃ!」