決闘者の心得


【はじめに】

決闘者とは、勝利を追及し、同時に己を磨き続ける勝負師の総称を言います。ここでは、当然遊戯王OCGを中心に解説して行きますが、世の中には様々な局面に於いて勝負事は存在し、勝負事の数だけ決闘者も存在するものです。

また、特定の勝負事を極めた人は、あらゆる勝負事に強いのも事実です。例えば天才の世界と呼ばれる、将棋、囲碁のプロ達は、本業はもちろんチェス、麻雀など、更にはギャンブルにも強いと言われます。と言うことは、勝負事には、強くなるための法則、原理...または心構えというものが存在するのでしょうか?

さて、現在の私は、数ヶ月間デュエルから遠ざかっていますが、小学生時代から様々な勝負事の場に身を置いて、真剣に勝利を追及し続けてきました。遊戯王に於いても、昨年の春から夏に掛けて、毎月100戦以上こなして、勝負勘=感性を磨いてきた自負はあります。そして、現在も社会人として「決して敗北の許されない」勝負の第一線に立ち続けているのです。社会人としての勝負は相手とWin-Winの関係、つまり共に勝てることが求められます。この背景が違う人間同士の、正解のない、結果の見えない勝負事は極めて難解です。それに対して、結果がすぐに出る遊戯王のような勝負事はある意味、平等で明快!かもしれません...

ここでは、遊戯王だけに留まらず、今までの人生に於ける勝負との向き合う姿勢を行間に込めながら、「決闘者の心得」を書いて行くつもりです。やや、抽象的でわかりにくい箇所もあるかもしれませんが、ストレートに読者の心に響く、イメージ=感性をぶつけてみたいと思います。皆様の心の深い部分、潜在意識層での共感、刺激を与えることを期待して始めさせていただきます。


【運は天にあり!】

「運は天にあり」とは、勝負の運はすでに定まっているので、自然の成り行きに任せるしかない...という達観した勝負観の一つです。もちろん、運が悪いから諦めるのではなく、人事を尽くして天命を待つ。つまり、与えられた条件の中で、出来ることを全て行った人のみが、使うことを許される言葉です。昔から良く言われる通り、言い訳ばかり吐く人には勝負師の資格はありません。運には波がありますから、うまく運をつかみ、波に乗ることが出来た人こそが頂点を極められるのです。遊戯王OCGでは、与えられた手札からBESTを尽くして初めて、運の尻尾が見えてくることでしょう!

勝負には「運」が付き物ですが、カードゲームではかなり重要な要素となります。将棋、チェス等、盤面上に全てが展開しているガラス張りの勝負事とは違い、見えない要素が多く含まれるからです。また、将棋などのように先手、後手が同じ構成の駒を使うのではなく、バラエティに富んだ両者のデッキ合計80枚は、前例のない組み合わせかもしれません。つまり、無限の変化を含んだ対決になるのです。なんと、奥が深いことか...運が支配するのは、シャッフルされたデッキから引くカードの順番。運から作り出された手札の順番・組み合わせによる自然な流れに従って、要所では流れが自分に有利なように変えるのです!決闘者として、まず最初に必要となる資質は流れを読む力(状況判断能力)。これについては次章で詳しく述べたいと思います。

勝負事に「もし」は禁物です。過ぎ去ったことを悔やんでも全く意味がありません。しかし、将棋で対戦後に行われる感想戦=対戦相手と了解の元での架空戦が許されます。「もしここでサンボルを使っていれば...」「この時、ウィッチで×Xを引いていれば...」私もこんな検討会を時々やっていました。「運が悪い」と嘆く前に、ご自身のプレイングとデッキを磨く為の反省会を行うのも悪くないですよ!

何故、自分は運を引き寄せることが出来なかったのか、相手がどれだけ巧みに運を引き寄せていたかが実感出来るかもしれません!実戦では最低限、その時の手札と場のカード、次に引くカードは覚えている必要がありますが、ログが残るCGIデュエルでは気軽に行えるはずです。「感想戦」...時間がある方は、今日から始めてみませんか?


【決闘者の勝負勘とは?】

決闘の状況と流れを正確に読み取り、無意識に無駄を省き、手札を温存しながら、有利な流れに変える...これが決闘者の勘と呼ばれるものです。意識的に状況判断、流れとアドバンテージのコントロールを積み重ねているうちに、勝負勘は研ぎ澄まされていきます。特に、勝負勘の鋭い決闘者との決闘は自分を高めるために有効。決闘者の脳裏に浮かぶ一瞬の「勝負勘」は理屈では説明出来ません。ここでは、決闘者の頭の中を無理やり形にして視覚化を試みることにします。

まず、状況判断はLP8000の広さを感覚的につかむことから始まります。例えば1900×2+1400×3で丁度8000。破壊輪、停戦、キャノン、枷などのダメージ系もモンスターと同じ扱いをします。常に両者のLPがプレイ何回分かを意識します。LP8000は広いようで狭いですし、手札が尽きた時の残りLP1000は限りなく広かったりすることもあります。止めの一撃がどんな局面からでも繰り出せるデッキ&プレイングが理想ですね。

次に場、手札1枚当たりの価値をLPに置き換える手法をご紹介します。番兵、押収、双子悪魔を基準として、1枚の標準価値を1000とします。手札にダブっている時は500づつ。サンダーボルト、羽根帚などの手札差を付けるチャンスのあるカードは2000として、出来るだけまとめて流すことを心掛けます。強欲な壺は無条件で2000ですね。ある意味最強魔法...これらを防ぎ、先の被害も防ぐ「王宮の勅命」は3000でしょうか?詳細は省きますが、慣れない内は状況判断を数値化して意識すると楽でしょう!ウィジャなどの特殊勝利条件については別の機会に語ります...

次に攻守のタイミング。序盤は手札消耗戦と呼ばれる一進一退の攻防が続くことが多いですが、必ずバランスが崩れる瞬間があります。場が空っぽになった、または手札が枯れて対応力が失われた。勝負師はこの瞬間を逃しません。攻める側は、アドバンテージを広げる大チャンス!守る側は被害を最小限に抑えて、一発逆転狙い。「または攻めこそ最大の防御なり...」のいずれかを選択することになります。決闘後に「あの場面が勝負の分かれ目だった...」と感じられる人はすでに強いか、これから強くなりますよ!

お互いの手札が豊富な序盤には相手手札に複数除去魔法があると想定して、基本的には1枚づつ、出来るだけ後に続くカードを使います。守りのモンスター、罠は1枚で十分です。そして、中盤以降に将棋でいう詰み状態になった時に、温存した手札を一気に使って、全力で仕留めに行きます。詰みを感じる力...常に先の先が読めれば、相手を翻弄することが可能なはずです。次章では、読みの精度を上げる「情報収集&分析能力」の重要性を説明していきます。


【情報収集&分析の重要性】

デュエルCGIでCPU相手にプレイされた方は納得されるように、遊戯王OCGに於けるCPUは決して強い相手ではありません。数百枚の多彩な効果カード群。そして、コンボはその掛け合わせ分だけ存在する。まさに無限大の変化...遊戯王のプレイングはそれだけ複雑で奥が深いと言う事です。コンピュータがAI(人口知能)を備えていても、中々付いていけるものではありません!

一方、チェスの世界では、世界チャンピオンでさえスーパーコンピュータ&ソフトに勝てないのは有名な話です。これは「チェスの勝敗=情報収集&分析能力が8割以上を占める」という説が有力です。具体的には1.盤面、駒全て見えている。(見えない要素がない) 2.総プレイ数が少ないので、過去の実戦譜を検索することで最善のプレイが見つけやすい(定跡の存在)などです。コンピュータが最も得意とするゲームだと言う事。色々な勝負事の経験から、情報戦の重要度に違いこそあれ、情報収集&分析能力で補うことで、勝負勘(感性)の精度を上げることが出来ます。情報の裏付けのある勝負手を「確信の一撃」(クリティカル・ヒット)と呼んでいます。

遊戯王に於ける「確信の一撃」へ至る情報の種類についてご説明します。

1.見えている情報 お互いのLP、自分の手札、場の表カード、墓地のカード
2.見えない情報  お互いのデッキ、相手の手札、場の裏(伏せ)カード

実は上記の分類には例外があります。見える情報から見えない情報を推測出来るからです。例えば、相手の墓地にミラーフォース、勅命、リビングなどの制限カードが存在する時、場に伏せている罠はこの3枚ではありません!この推論によって、ある程度自分がどういった戦略を取れるか見えてくるはずです。また、強引な番兵、押収などの通常は見えない相手手札を見られるカード、停戦協定、光の護封剣など裏守備モンスターをひっくり返す効果を持つカード...使うタイミング次第では、流れを変えそうだと思いませんか?たくさん例があるので、他はご自分で考えてください。「見える情報は最大限利用する」ことが最重要なキーワードです。また「相手が自分を知る以上に、自分が相手を知っている」ことは戦略的に重要なキーワードだと思います。

情報戦として、そのデュエルが始まる前に勝負がついているものも存在します。

3.潜在意識に眠る情報 過去の対戦、他人の決闘記、実戦で使ったコンボ

当たり前のことですが、実戦経験が多い、対戦したデッキ種類が多い、たくさんコンボを知っている方が有利な訳です。経験は積み重ねるほど身に付いて、無意識に最善手を使えるようになります。机上の理論、コンボではまだ十分ではありません。実戦で使ってこそ、武器にすることが出来ます。状況、流れを意識しながら決闘する人がより深く、身に付けることが出来るのは言うまでもありませんね。

勝負事には「感性(勘)」だけでなく、情報戦も重要です。しかし、情報収集&分析能力だけ磨き、定跡に従っていれば勝ち続けられるほど甘いものではありません。次章では、「心理戦」いわゆる「精神波動攻撃」について解説したいと思います。


【決闘の醍醐味・心理戦】

心理戦を制する決闘者の条件とは何でしょうか?まず、自分自身が相手からの揺さぶり、プレッシャーに動揺しない、強い精神力が要求されます。プレイの際に怯えないのは当然として、焦り、過信も禁物です。精神的に中庸=リラックス。決闘に集中しながら、プレイ一つ一つを大切にする姿勢こそ求められるものでしょう!心理戦に強い人の特徴として1.どんな状況でも動揺せず、客観的な視線を保てる人 2.相手の表情、プレイから相手の心理状態を読み取れる人 3.プレイの前に一呼吸おいて戦況、流れを確認出来る人 4.ミスをしても集中力が切れない人などが上げられます。あなたは、いかがですか?心理戦に持ち込むには、色々な手段があります。

1.表情、特に眼力、視線による揺さぶり
無表情=「ポーカーフェイス」は昔から勝負師の代名詞です。逆に相手ターンにじっと相手の眼を探るだけでも効果絶大です。

2.相手の弱点を突いたり、ウザいカードを使って重圧を掛ける。
重圧が継続、連続するほど効果的。徐々に精神を削ることができます。例:勅命+ハ・デス、死霊  護封剣+魔球 等

3.意表を突く、計算を狂わせる戦術、戦法。
多用すると、プレイ負荷を上げたり、自滅の可能性が高くなるので、効果的なタイミングで1発を狙うと良いと思います。例:精霊の鏡

4.はったり戦法
意味がないカードをあえて伏せて、相手の動揺を誘う戦法。沈着冷静な相手に使うと傷口を広げる可能性が高いので注意が必要。おどおどした相手、必要以上に考えすぎる相手なら試す価値有!

5.言葉によるコントロール
個人的には、あまりお薦めしていません。卑怯と受け取られて怨恨を生むかもしれませんし、勝っても後味が悪いのは避けたいところ...言葉に頼らずに「無言のプレッシャー」を操ってこそ、真の精神波動攻撃使いと呼ばれるようになるでしょう!

6.心理戦に持ち込まない
こんな選択肢も可能です。相手の揺さぶり、圧力を軽く受け流して、淡々と最善手を選ぶ決闘者は安定して強いと感じます。相手の精神波動攻撃を跳ね返すことによって、仕掛けた側の動揺を誘える可能性もありますし、いかなる精神攻撃にもびくともしないと言う意味では、最も厄介な相手かもしれませんね。

心理戦は、初めて対戦する相手よりも、お互いに良く知っている相手が掛かりやすい側面もあります。例えば、普段、ミラーフォースで痛い目に合わせている相手に、ミラーフォースを抜いて戦うと、何時までも墓地に行かないの、「伏せ罠を見たらミラフォと思え」状態が終盤まで続き、止めの一撃が鈍るかもしれません。亡霊に怯えるということ...情報撹乱戦とも言える高度な技ですね。良く戦う相手が自分のデッキ構成を熟知しているのを逆手に取って、あえて1、2枚スパイス的カードに入れ替えるのも面白いと思います。その為に、サイドデッキもあるのですね。


【おわりに】

最初に戻りますが「運は天にあり!」遊戯王OCGは、運の要素が大きい勝負事ですので、勝つ時は何も考えないで勝てますし、負ける時はあっさり負けることもあります。どれ程強い人でも逃れられないと思います。でも、あっさりと運に負けるのは悔しいと思いませんか?やはり、与えられた条件の中でBESTを尽くすべきだと信じています。もし、何もプレイしないで1ターンキルされたとしても...です。これは信念?

ここでは、決闘者の心得として、デュエルに向き合う姿勢みたいなものを書いてきました。「たかがカードゲームなのに、大げさだなぁ(笑」「そんなにたくさんのこと言われても、1回のデュエルでは半分も出来ないよ!」確かにそうかもしれません。しかし、負けない決闘者は居ませんが、現実に強い決闘者は存在するのです。そして、強い決闘者は多くの実戦経験で育んだ、無意識で多くのことをやってのける「勝負勘」を確かに身に付けているのだと思います。

せっかく、遊戯王OCGというカードゲーム、そして決闘仲間達と出会ったからには、お互いに腕を磨き合って行きたいものですね。スランプの時、または行き詰まった時、呪文のように唱えて欲しいことがあります。「運は天にあり!」あなたは与えられた条件の中で精一杯のことをやったでしょうか?運を引き寄せようと努力したでしょうか?そんな時の踏み石の一個として、当心得を思い出していただければ幸いです。具体的なプレイングは別の機会に語りたいと思います。それでは!また〜