構築者の心得(後編)


【カード集め】

デッキのテーマ、コンセプトが決定したら、次に大雑把に使えそうなカードを集めます。最初は漠然と使えそうなカードを頭の中でイメージします。ある程度集まってきたら、実際のカードまたは、PCのメモ帳等を使って整理すると良いでしょう!ここでは優先度順に並べます。例えば、魔法なら壺/施し2/サンボル/ブラホ/羽根帚...

あくまで投入候補なので、多めに集めるのがコツです。私の場合はいつも50枚程度。内訳として基本カード30枚、テーマに沿ったオリジナルカード20枚くらいです。仮に17−18−5にしたい場合は20−22−8くらい。モンスターと罠は+2、3枚、魔法はやや多めにして、最終的には魔法で調整するのが良いと思います。

罠、魔法は基本カードを中心にテーマ、コンセプトの核となるカードに絞って入れます。コンボ前提なら2枚セットの投入です!無駄なら思い切って2枚共抜いてメリハリを付ける感じが良さげですw逆にモンスターは基本カードは少ないですし、テキト〜でも、魔法、罠でサポート出来れば十分戦えますので、普段使われないカードでも積極的に投入してオリジナリティを主張しましょう!もちろんテーマ、コンセプトに合わせた相性(属性、種族)と、ある程度の攻撃力、守備力は確保する必要はあります。単体の攻守、効果で劣る場合はコンボ性能で補うようにします。例えば、戦士デッキで、フリード、ギアフリードを使う際、コマンドナイト、増援で補うとか...

私の経験では、カード集めの際に「おっ?」と自分自身で驚くようなマイナーカードが多数入った場合は大成功か、大失敗のいずれかのようです。前者が斬新な面白いデッキ、後者は無謀な企画倒れデッキです。最初から完璧を目指さずに、自由な発想でテキト〜をモットーにすれば、企画倒れでもダメージ少ないですよ♪投稿前に消えても、デッキ構築の過程だけも十分楽しめますから...カード集めの極意は「テキト〜」とまとめてこの章を終わりにします


【カード選定1〜尖り】

前章で大雑把に集めた50枚を、ダイヤの原石と祈りつつ磨いて行きます。カード選定には「尖り」と「バランス」の相反する二つの要素があります。「尖り」はテーマ、コンセプトを突き詰めた、普段使われないマイナーカードへの挑戦、またはオリジナリティの表現のこと。次の章で語る「バランス」は機能別にバランス良くカードを配して、プレイ負荷を軽くすることです。特定テーマのキラーカード(苦手なカード)対策もこれに含まれます。

私は自分の中に尖り人格とバランス人格を持って、自分のデッキを客観的に鑑賞するつもりで、カード選定しています。ある程度の経験は必要ですが、デッキ診断の場数を踏むことで磨かれると思います。ファン要素を維持しながら、絶妙なバランスを取ることが出来るようになりますし、最終的な完成度の高さにつながって来るはずです。つまり、デッキ鑑賞(診断)が得意な人=優れたデッキ構築者であることが多いのです。(鑑賞していない現状の私は微妙...w

カード選定では基本的に、2種類の同種のカード、例えばモンスターのアタッカーを比較検討して、いずれかを捨てることになります。50枚を40枚に絞る為には30枚は早めに固定して、残りの20枚から10枚選ぶのが良いと思います。最初はデッキのテーマ、コンセプトを強調する方向で、直感を信じて比較検討すると良いでしょう!尖り選定フェーズでは欠点には目をつぶり、長所を伸ばすようにします。この後のバランスを見たカード選定、デッキ投稿、実戦テストの結果次第で、いつでも敗者復活が可能ですから気軽に選定するべきです。落選したカードは忘れないようにサイドに入れて取っておきます。この時、大切なのは、選定した理由です!これを、デッキ投稿、実戦テストの際に思い出すことによって、見逃しを防ぎますからね♪

さて、全てのデッキ構築者は経験に関係なく、自分らしさをデッキに反映するべきだと思います。同じテーマ、コンセプトに正解はありませんし、皆が同じデッキを使っていては面白くありませんから...例え、スタンダードデッキであっても、自分風味のスパイスを1、2枚振り掛けるだけでも、対戦相手、またはデッキ鑑賞者の印象は違うと思います。決して、無謀ではない独特の個性...簡単そうに見えて、難しいです。これを表現出来るように感性を磨きたいものですね♪徹底的に尖らせることによって、欠点を隠し、絶妙のバランスを取る...これが最終的な目標だと思います。


【カード選定2〜バランス】


デュエルを純粋に楽しむなら、尖り感覚を優先させるべきですが、強さを追及するならバランス感覚は重要です!ファンデッキが勝とうとするのに対して、スタンダードは負けないデッキだと思います。剣道を例に取ると、ファンデッキ=上段の構え、スタンダード=中段の構えかな?つまり、一点傑出型のファンデッキに対して、バランスの取れたスタンダードと言う図式です。手札の引きに左右されず、プレイングが楽で、弱点が少ないデッキは強いですからねw

カード選定の最初は思いっ切り尖らせるべきですが、中々勝てないデッキではストレスが溜まりますので、バランスを取るのは重要な作業です。バランスと言っても、かなり多くの要素を含みます。ここでは、代表的なものを箇条書きしてみたいと思います。全体のバランスを崩すカードは面白いことに、何となく浮いて見えるものです。

1.攻撃、除去、手札強化など効果別に過不足なく投入。無駄は極力省く!
2.特定のキラーカード(サイコ、勅命)などの対策を複数実施。
3.場に出しにくい上級モンスター、コンボ前提カードは最小限に!
4.同様に手札は常に確保出来るようにする。(壺、施し、ウィッチ、クリッタ-、キラスネ、パーシアス、蜃気楼 など)
5.手札のアドバンテージを取るために、複数対象の除去、無効化カードは極力入れる。(サンダーボルト、ブラックホール、ハーピィの羽根帚、大嵐、サイコショッカー、王宮の勅命 など)
6.モンスター除去は最低6枚(サンダーボルト、ブラックホール、抹殺の使徒、地割れ、サンダーブレイク、異次元の戦士、ならず者傭兵部隊、ミラーフォース)魔法、罠除去は最低4枚(羽根帚、大嵐、サイクロン2、サンダーブレイク)は投入!大嵐を入れない場合はトリプル・サイクロンを検討する。
7.コンボの発動率はあまりに低くて期待が持てない時は思い切って抜く。例えばコンボカードなのに1枚しかない。特定の2枚しかコンボが出来ないなど。

あまりバランスを取りすぎると、せっかくの斬新なコンセプトが薄れてしまう危険がありますので、あまり神経質にならない方が良さげです。少しくらいバランスが崩れて隙がある方が、プレイングがスリリングで楽しめるし、愛着が湧くと言うものです。テーマ、コンセプトの中心であるカードがバランスを崩している、何となく浮いている場合は、サポート力不足が考えられます。中心カードと相性が良いカード、相乗効果を発揮出来るカードを優先して入れるようにしましょう!


【サイド・チェンジ術】

最終的には過不足なく40枚に収まってこそ、総合芸術品として鑑賞される存在だと思いますが、デッキ構築の過程においては、残り20%(6〜10枚)は流動的であるべきです。デッキ全体で構築者の感性を表現するのですから、細部への無用なこだわりは捨てましょう!今回は、私が良く使う手法をご紹介させていただきたいと思います。これはサイド利用術であって、サイド論ではありませんので、誤解のないようにお願いしますね。

「カード集め」でテーマ、コンセプトに則して直感的に選んだ基本カード30枚、オリジナル20枚、合計50枚を「カード選定」において「尖り」「バランス」の視点で、とりあえず40枚に絞ります。この際に落選した10枚と、その後デッキ投稿の際にアドバイス貰ったカード5枚程度をサイド・デッキにまとめます。第一印象で選んだものは、使い方によっては光る可能性が高いですし、客観的アドバイスで推薦されたカードのも潜在能力があると信じるからです。メイン40枚+サイド15枚を実戦テストで入れ替えて、試して調整して行きます。

ある程度完成させたい、思い入れのあるデッキに対しては、サイドのカードを最低3回試してみます。実はWBのキーカードである光の護封剣は初代ではサイドに入っていました。実戦テストの際に、サイコ、魔球と組み合わせて鬼のように使えることを実感して、メインに入れることになったのです。机上の空論と言うように、頭の中で考えたことは、実戦感覚とは微妙に違うので、少しでも光るものを感じたカードは試してみることをお薦めします!「好きじゃない...」「入れたくない...」こんなマイナスイメージを持ったカードこそ、新しい価値観を生み出す元になるかもしれませんよ!「目からウロコ」...これを感じた瞬間に次なる進化が始まるかもしれません!

私のモットーは、気に入ったコンセプトは、半年、1年と長い時間を掛けて、じっくりと進化させて行くことです!ですから新しいシリーズが登場すると新たなサイドを結成して試す事にしています。そんな好例がWB(ウォーター・ブロック)です。当初から存在したグリズリー、アクエリア、魔球、人魚を中心として、スピア、ニュート、ナーガ、パーシアス、月の書、死霊...と2代目、3代目と新しくなる毎に2、3枚入れ替えながら進化してきたのです。もちろん、新シリーズが出る事に全く新しいコンセプトに挑戦するのは楽しいですが、特別なデッキを持っていると、もっと遊戯王の奥深さに触れることが出来ると思います。こんな感覚を味わったことがない方はぜひ、この機会にお試しください!


【最終調整術】

デッキの調整方法として、最も有効なのが「デッキ投稿」と「実戦テスト」の二つです。これらの両輪は感覚的にはかなり違います。前者は客観的、後者は主観的...または前者は推論、後者は実証実験。ですから、デッキ投稿の時に感じたことを、実戦で試してこそ意味を持つと思います。

カード選定で40枚に絞って、完成度80%くらいの手応えを感じたら、とりあえずデッキ板、海部屋なら「調整室」に投稿してみます。この際にテーマ&コンセプト、悩んでいるカード等を示せると、的確な回答をもらえると思います。そのデッキの一番の理解者が悩んでいるポイントは、いかに優れた鑑賞士さんでもすぐにはわかりませんからね。ここなら親切、丁寧に、しかも的確なアドバイスを受けられると思います。

さて、調整室で受けたアドバイスに従ってデッキを組み直して、実戦で試してみます。もちろん、あなたの直感の方が正しい場合が多いと思います。こんな時は「せっかく受けたアドバイスだから...」と無理に自分を合わせないで、自分の感性に従いましょう!対戦相手がいない場合はデュエルCGIがお薦めです。自信がなければ、CPU相手でもデッキ性能はわかります。実戦結果により、数枚入れ替えて完成です!初代から完璧を求めない方が良さげです。90%以上完成していれば十分過ぎるくらい...長く使うデッキなら、徐々に磨きが掛かりますからね。

自分で納得のいくデッキが完成したら、次は「鑑賞室」に投稿してみてください。調整室よりは、感想、今後の方向性などが聞けると思います。実はテーマ、コンセプト自体がもっと進化出来るかもしれません!テーマ、コンセプトの進化に合わせて、自然とデッキ構成も変わっていくはずです。ダイナミックな世界だと思いませんか?これが、デッキ構築の醍醐味なのです!


【おわりに】

デッキ構成に正解はありません。あるとしたら、決めるのはあなたです。正確に言うと、意識しなくても自然と構築者の感性、個性、プレイスタイルから形が出来てくるのです!つまり、構築者の感性の実体化=デッキ。ほとんど同じ構成の見えるスタンダード・デッキだとしても、実は微妙に違っているものです。付き合いの長いネット仲間のデッキは一目見て、「らしいなぁ...」と感じるほどですよ!

せっかく、感性の一部がデッキとして実体化したのですから、消滅してしまうのはもったいないと思います。記録しておかないと、何時しか脳裏から消えてしまいますからねw そんな時は、特選レシピに記録しておいてください。少なくとも共感した方はCGIで試してくれるでしょうし、快い刺激を受けた方は別のコンセプトに挑戦するキッカケになるかもしれません。他の決闘者のお役に立てれば嬉しいですよね♪

また、斬新なデッキ、会心作はぜひ「殿堂」に挑戦してみてください。上位入賞出来れば励みになりますし、優勝出来たら最高の気分ですよ!多くのデッキ構築名人と交わっているだけでも、鋭い感性を自分のものにすることが出来ます。最初は勇気が必要だと思いますが、一歩踏み出せればOKですね♪それでは!また〜