暗黒の魔人編 第3章
enchaさん作

作成:02/11/16


バリバリバリバリバリ。
ペガサス島に向かうヘリの中は無言だった。
「しっかしよ〜杏子を拉致したペガサス顔のヤツは、神のカ−ドをどうするつもりなんだ?」
沈黙に耐え切れなくなったのか、城乃内が話し出した。
「何しろ神のカ−ドは世界に1枚しかない究極のレアカ−ド、高く売れるだろうしな〜。」
「フン、貧乏人の考えそうな事だな。」
「んだと!海馬!」
ピ−ピ−ピ−、城乃内の言葉を遮るようにブザ−音が鳴った。
パチッ、海馬が操縦桿の脇のスイッチを入れた。
「海馬様。」
スピ−カ−から声がする。
「海馬様、通信衛星のシステムをペガサス島の座標にセット完了しました。今から、島全体をモニタ−する事が出来ます。」
「分かった、ご苦労。」
そう言うと海馬は別のスイッチを入れた。
天井の方から薄型のモニタ−が降りてきた。
「さて、今からペガサス島の今の状況を見てみるとするか・・・。」
海馬がモニタ−のスイッチを入れた、モニタ−にはある島の映像が映し出されていた。
「これがペガサス島の映像だ、もう少し拡大してみよう。」
海馬が操縦桿脇のキ−ボ−ドを操作すると画像が少しずつ大きくなっていく。
「アラッ?」舞が何かに気付いたようだ。
「どうした?舞。」
「あそこに船が停泊してるみたい・・・。」
「船?」
「何処だ?」
「島の東側。」
海馬がキ−ボ−ドを操作する、船が停泊しているであろう場所が映し出された。
確かに船だ、周りに数人の黒服の男達がいる。
「これは快速艇だな。」
船の形を見た海馬がそう言った。
「誰か降りて来たみたいだぜ。」
城乃内の言う通り、快速艇の中から降りて来た人物が映し出されていた。
「あ、あれは!」
船から降りて来た女性の顔を見た舞が驚く。
「デ、デビル・ディ−ラ−・・・。」
「デビル・ディ−ラ−?」
「聞いた事がある名前だな。勿論本名では無いだろうが、アメリカの裏デュエル界では結構有名な女だそうだ。」
「えぇ、あたしがカジノのディ−ラ−をやってた頃に何度か会った事があるわ。本名はマリア・W・エンジェル。確かにディ−ラ−としての腕は凄いんだけど・・・、本名に似合わないくらいに相当ヤバイ女よ。」
「どう・・・ヤバイんだよ?」
「アルコ−ル中毒、ニコチン中毒、そして極めつけが・・・。」
「ドラッグ中毒、と言った所か?」
「えぇ・・・。」
モニタ−の映像はデビル・ディ−ラ−の後に続いて船から降りて来た黒い鎧を着た男を映し出していた。
「何だ?あの鎧野郎は?」
「ヤツはアメリカの裏デュエル界で『ジェネラル』と呼ばれている男だ。」
「ジェネラル・・・。」
「どうやらこの2人がフェニックスの言う『神のカ−ドを賭けたちょっとしたゲ−ム』の相手のようだな、遊戯。」
遊戯はベルトに付いているカ−ドケ−スからデッキを取り出した。
「フェニックスがカ−ドでオレに挑んでくるのなら受けてやる!そしてヤツを倒し、杏子を連れ戻す!」


「ココがかつてMr.ペガサスが島全体を使って大会を開いたと言う島ね?」
快速艇から降りた女性が懐から小瓶を取り出しながら言った。
「ホォ、オレも話には聞いていたがな。」
女性に続いて船から下りてきた黒い鎧の男を見ると、出迎えたフェニックスの部下達の表情が変わった。
「我々はフェニックス氏より依頼を受けたデュエリスト2名。フェニックス氏の元に案内してもらいたい。」
黒い鎧の男、ジェネラルがそう告げる。
「フェニックス様があちらの城でお待ちかねです、どうぞ。」
リ−ダ−格の男が2人のデュエリストを城へと案内した。
「城ね〜、あんたと丁度いい組み合わせじゃないか?ジェネラル。」
小瓶の中身を飲み干したデビル・ディ−ラ−がジェネラルに話し掛けた。
「どういう意味だ?」
「アタシの聞いた依頼内容では、もうすぐココに武藤遊戯が来るそうじゃないか・・・。」
「それがどうした?」
「あんたはあの城を攻めて来る敵を命がけで守るガ−ディアン・・・。ステキじゃない?」
「フン、もう酔っているのか?」
「アタシが?冗談!」
デビル・ディ−ラ−が持っていた小瓶を放り投げた。
パリン!小瓶が地面で砕け散った。
「この程度の酒では全然酔えないわ。ねぇ?」
デビル・ディ−ラ−は話し相手を、自分達を案内する為に前を歩いているフェニックスの部下に変えた。
「何でしょうか?」
「城に酒くらいは当然置いてあるんでしょうね?」
「ハァ〜、お酒なら用意してありますが・・・。」
「ならこの続きは城の中でするわ。」
と言ったきり、2人共黙ってしまった。
(何なんだ?この2人は・・・)
そう思わずにはいられなかった。


「どうせヤツ等もオレ達が来る事は知っているのだ。このまま城の目の前まで行ってくれるわ!」
島の上空まで来て着陸場所を探していた海馬が言う。
「事故らねぇようにな!」
「フン、心配か?」
「ヘン!てめぇとこんなヘリで心中したかねぇだけだ!」
海馬は城の近くに着陸出来そうな空き地を見つけ、そこにヘリを着陸させた。
「行くぜ、みんな。」
遊戯が真っ先にヘリを降りた。
「フン、デュエリストとしての闘争本能の表れか・・・、それともあの女の身を案じての事か・・・」
海馬もヘリを降りた。
「何モタモタしてんのよ!城乃内!」
「ベルトが外れねえんだからじょうがねぇだろ!」


「来たようデスネ〜。」
・・・遊戯達も到着したようだがな・・・
「ではこれで全ての準備が整ったという事デスネ〜。」
ガコン!フェニックスの部屋の巨大なドアが開かれた。
「フェニックス様。デビル・ディ−ラ−、ジェネラル、両デュエリストをご案内して来ました。」
「ご苦労デ〜ス。2人共こちらへ。」
2人のデュエリストが部屋に入って来た。
「お初にお目にかかりますわ、フェニックス様。」
デビル・ディ−ラ−ことマリア・W・エンジェルが挨拶をした。
「よく来てくれまシタ。でも早速ですが・・・。」
と言うとフェニックスは壁に埋め込まれている巨大モニタ−のスイッチを入れた。モニタ−にはヘリを降りて来る遊戯達の姿が映し出されていた。
「あなた達にはあの遊戯ボ−イとデュエルで勝負していただきマ〜ス。よろしいデスネ?」
「それが依頼ですからな〜。」
ジェネラルがその言葉に応じた。
「ではお2人にはこれを・・・。」
フェニックスが2人のデュエリストに近付いていった。
そして2人の前に伏せたままの2枚のカ−ドを見せた。
「遊戯ボ−イは私の兄、ペガサス・J・クロフォ−ドが残した3枚のゴッド・カ−ドを持っていマ〜ス。この2枚のカ−ドはそのゴッド・カ−ドと対等に戦う事の出来る“魔人カ−ド”なのデ〜ス。」
「これを1枚ずつ取れと?」
「イエス。」
「じゃあアタシはこれ。」
デビル・ディ−ラ−は左のカ−ドを引いた、ジェネラルは残ったカ−ドを。
「あなた達が引いた魔人を見てみてくだサ〜イ。」
2人は自分が引いたカ−ドを裏返した。
「魔人・・・アスタロト?」
ジェネラルは自分の引いた魔人カ−ド、アスタロトを眺めていた。
「魔人アスタロトは神のカ−ド、オシリスの天空竜を参考に効果を付けマシタ。墓地にモンスタ−が増えれば増えるほどパワ−アップしマ〜ス。魔人カ−ドも神のカ−ド同様、3体の生贄が必要ですが、アスタロトはちょっと召喚方法が違いマ〜ス。以上の点を考慮してデッキを構築してくだサ〜イ。」
一方、
「ヤダ!何これ。蝿の化物?」
デビル・ディ−ラ−は魔人ベルゼブブのカ−ドを見て思わずそう言った。
「魔人ベルゼブブはオベリスクの巨神兵をベ−スに作りマシタ。場に出せれば強力なカ−ドですが、ちょっと扱いが難しいカモしれまセ〜ン。その辺りはユ−のプレイングにお任せしマ〜ス。」
「カ−ドの在庫はあるのかしら?」
ベルゼブブを見つめながらデビル・ディ−ラ−は聞いた。
「普段アタシが使ってるデッキじゃこのカ−ドの能力には合わないわ。」
「オレが持って来たデッキでも、アスタロトの能力には合わないしな〜。」
「心配はいりまセ〜ン。全てのカ−ドをあなた達が控えるデュエルステ−ジに用意してありマ〜ス、中にはまだ市場には出回っていないカ−ドもありますから存分に使ってくだサ〜イ。」
「なら後はそのステ−ジとやらでデッキ構築に取り掛かるだけね。」
そう言うとベルゼブブのカ−ドを持ったデビル・ディ−ラ−は、ステ−ジへと続く通路へと歩いていった。
「さて、オレも行くか。」
ジェネラルもデビル・ディ−ラ−の後に続いた。
2人を見送ったフェニックスが窓の方へと歩いていく、大きな窓を開けベランダへと出たフェニックス・・・。
「サァ、始めるとしまショウか・・・。」
・・・闇の魔神を復活させる為の儀式をな・・・


4人がペガサスの城の前にやって来た、城の門は閉ざされている。
「オイ!この門を開けやがれ!!」
ガン!ガン!さっきから城乃内が門に蹴りを入れているが、当然門はビクともしなかった。
「オレ達がココに来てる事をヤツ等は承知してるはずだ。晩餐の準備でもしているのか・・・。」
そんな海馬の冗談を遊戯は聞いていなかった。
「フン。」
ゴゴゴ・・・、門が開かれた。
ダダダッ、中から出てきた黒服の男達が遊戯達を取り囲んだ。
「ようこそ、神のカ−ドの所持者にして『決闘王』の称号を持つ武藤遊戯とその仲間の皆さん・・・。」
男達のリ−ダ−らしき男がそう言うと、
「オレが遊戯の仲間だと!」
海馬が1歩踏み出した、その海馬に銃が付き付けられた。
「大人しくしていただきましょうか、海馬瀬人。」
「クッ!」
「フェニックス様がお待ちかねです、どうぞ。」
遊戯達は男達に囲まれながら城の中へと通された。
「杏子は無事なんだろうな?」
ヘリを降りてから初めて遊戯が声を発した。
「あの少女は我々の方で丁重にお預かりいたしております、モクバ少年も同様に・・・。」
(モクバ・・・)
城の前の庭園に到着した。
「あそこのテラスからフェニックス様がお話するそうです、しばらくお待ちを・・・。」
そう言うと男達は遊戯達から離れていった。
遊戯は城の入り口を見ていた。テラスの下に位置する場所に鉄製の扉が2つ・・・、よく見るとカ−ドを差し込んでカギを開ける電子ロック式の扉のようだ。
「ようこそ、遊戯ボ−イ。」
テラスの方から声がした、見上げるとそこには・・・。
「ペガサス!」
「NO〜。私はペガサスの双子の弟、フェニックス・J・クロフォ−ドデ〜ス。」
「お前が誰だろうとどうでもいいぜ!杏子は何処だ!」
「ミス杏子は城の屋上にある小部屋の中にいマ〜ス。モクバボ−イも一緒にね・・・。」
海馬が1歩踏み出した。
「フェニックス!今からそこに行く、覚悟しておけ!」
「海馬ボ−イ、その扉は神のカ−ドを持つ者でないと開けられまセ〜ン。」
「何だと!」
「このテラスの下にある2つの扉は、カ−ドを差し込んでロックを解除する必要がありマ〜ス。そのキ−カ−ドは・・・。」
「神のカ−ド、という訳か・・・。」
遊戯がそう答えた。
「その通りデ〜ス、遊戯ボ−イ。」
「じゃあ、神のカ−ドを持つ遊戯以外はこの城に入れねぇって事か?」
「そうなるわね。」
「さて、その扉の奥には私が今日の為に雇った2人のデュエリストが控えていマス。その2人のデュエリストを倒し、私のところまで辿り着く事が出来たらミス杏子とモクバボ−イはお返ししマ〜ス。」
「ヘリで見た映像に映っていたあの2人ね?」
「らしいな。」
「デハ遊戯ボ−イ、城の屋上で待ってマスヨ。」
そう言うとフェニックスの姿はテラスから消えた。
「遊戯、オベリスクをオレに渡せ。」
海馬が遊戯に言う。
「海馬・・・。」
「オレはフェニックスの所まで行かねばならん、モクバをオレ自身の手で取り戻す為に・・・。」
(海馬・・・)
遊戯は神のカ−ドが入っている小箱からオベリスクの巨神兵のカ−ドを取り出し海馬に渡した。
「遊戯!」
「心配ない、城乃内君」
海馬は持っていたケ−スからデッキを取り出した。そしてデッキから何枚かのカ−ドをケ−スのカ−ドと取り替えた。
「オレは左の扉から入る、次に会う時は・・・。」
「城の屋上で・・・。」
海馬が左の扉に向かって歩き出した、そして扉にオベリスクのカ−ドを差し込んだ。
ピピッ!ガチャ!
扉のロックが解除される音を聞いた海馬は扉を開け、中に入っていった。
「じゃあ城乃内君、舞。ココで待っててくれ。」
「気を付けて、遊戯。」
「遊戯、あんな野郎達に負けんじゃねぇぜ!」
「あぁ。」
遊戯も右の扉の前に立った。オシリスのカ−ドを扉に差し込み、ロックを解除した。
「じゃあ行って来るぜ!」
そう言うと遊戯は扉の奥に消えていった。
「・・・行ってしまったわね、2人共・・・。」
「あぁ・・・。」
残された城乃内と舞だったが、背後に気配を感じて振り返った。
「!!!」
そこには黒い霧が立ち込めていた。
「な、何だ!アレは?」
「もしかしてアレが遊戯の言っていた・・・。」
「羽蛾から出てきたっていう黒い霧か?」
・・・私の予想通りだ、遊戯は海馬にオベリスクを渡した・・・
「何?この頭に直接響いてくる声は?」
・・・お前達もはるばるココまで来て、遊戯達が神のカ−ドを全て失って戻って来るまで待つのも退屈であろう・・・
「誰だ!てめぇは!」
・・・私か・・・
黒い霧が徐々に集まって来た、そして人に近い形を形成していく。
・・・私の名はミスト、闇の世界の住人・・・
「闇の世界の住人だって?」
城乃内が舞を庇うようにミストの前に立ちはだかった。
・・・ホゥ、女を庇うか・・・
「当たりめぇだ!舞を操ろうなんてマネしやがったらタダじゃおかねぇ!」
・・・私の能力は知っているようだな、しかしその女を操るなんてマネをする為にココに出向いた訳ではない・・・
「どういう事?」
・・・遊戯や海馬がフェニックスの所まで辿り着くまで待っているのは退屈、いや、あの2人がフェニックスの所まで辿り着く事はないだろうがな・・・
「ま、まさか・・・。」
「まさか、何だよ?舞。」
「あなたがフェニックスの背後にいる黒幕・・・。」
・・・察しがいいな、女・・・
「じゃあ杏子を拉致したりさせたのもてめぇか!」
・・・全ては神のカ−ドを手に入れる為・・・
「そんな事の為に・・・。」
「てめぇ!ぶっ倒してやるぜ!」
城乃内がミストに飛びかかって行った、しかし霧状の身体のミストに城乃内のパンチは通用しない。
・・・私を倒す?面白い・・・
ミストは胸の部分に手を入れた、そして何かを掴み出してきた。
「デッキ?」
・・・私を倒したくばデュエルで倒すがいい・・・
「面しれぇ!オレも退屈してたところだ!受けて立つぜ!」
城乃内はポケットからデッキを取り出した。
・・・そこの女もその男と組むがいい、ダッグ・デュエルだ・・・
「ダッグ・デュエルですって?あなた1人、って言ってもいいのかしら?あたし達2人を相手にすると言うの?」
・・・心配するな、私のパ−トナ−は用意してある・・・
ゴゴゴゴゴ・・・、城乃内達が立っている近くの地面が動き出した。
「な、何だ!」
「・・・地下への階段。」
・・・来るがいい、この地下に秘密のデュエル室がある・・・
そう言うとミストの姿が消えた。
「行くの?城乃内。」
「当たり前だ!闇の住人だか何だか知らねぇが、許せねぇ!」
城乃内が地下への階段を降りていった。
「しょうがないか・・・。」
そう言うと舞も階段を降りていった。