暗黒の魔人編 第1章
enchaさん作
作成:02/11/16
・・・我を解き放て・・・。 ・・・この忌まわしき封印を解け・・・。 ・・・我の下僕共よ・・・。 ・・・・・・・・・・。 ・・・光のトライアングルを形成する3枚の神のカ−ドが揃った・・・。 ・・・闇のトライアングルを形成する3枚の魔人カ−ドを揃えよ・・・。 ・・・・・・・・・・。 ・・・6枚のカ−ドを揃えよ・・・。 ・・・光と闇、カオスの六芒星を形成する6枚のカ−ドを・・・。 ・・・・・・・・・・。 ・・・オベリスク、オシリス、ラ−・・・。 ・・・光の石達よ・・・。 ・・・そして・・・。 ・・・アスタロト、ベルゼブブ、サタン・・・。 ・・・暗黒の石達よ・・・。 ・・・・・・・・・・。 ・・・闇の世界の住人達よ・・・。 ・・・我が下僕共よ・・・。 ・・・我を目覚めさせるのだ・・・。 ・・・光ある所に影あり・・・。 ・・・神の存在する所・・・、魔人あり・・・。 ・・・・・・・・・・。 「何と言われようともこれはペガサス様のご意志でございます。」 I&I社本社ビル、会長室。 2人の人物がソファに座り、激しいやり取りを繰り返していた。 I&I社名誉会長ペガサス・J・クロフォ−ドの死後、空席となっている会長職を狙う派閥争いが繰り広げられていた。次期会長候補は2人・・・。 「私には弟として兄の残したI&I社を引き継ぐ義務と資格と責任がありマ〜ス。何故我々クロフォ−ド家と血のつながりのない、あの少年が兄の跡を継げるのデ〜ス。」 ペガサスの双子の弟、フェニックス・J・クロフォ−ドはそう主張する。 それに対し、 「何度も言いますが、これはペガサス様がお決めになられていた事。しかもフェニックス様、あなたはクロフォ−ド家を追放されたお方。ペガサス様の弟という事実だけで済まされる話ではありません。」 もう1人の会長候補であるクロフォ−ド家の養子、グリフォン・J・クロフォ−ドの代理として、フェニックスとの会談の席に座っている“I&I社・会長秘書室”室長、リリア・バルバロッサは反論する。 「ユ−では話になりまセ〜ン、グリフォンをココに呼ぶのデ〜ス。」 「グリフォン“様”は今、大変お忙しいのです。私が代わってお話をお聞きしています、と言いましても私からお話する内容に変更はありませんが・・・。」 この一言でフェニックスは悟った、グリフォンは既にI&I社次期会長の座をほぼ約束されているという事を・・・。17歳らしからぬ経営手腕を見込まれてI&I社に招かれ、またクロフォ−ド家の養子としても迎え入れられたグリフォン。それに引き換え自分は・・・。 フェニックスは席を立った。 「こうなれば正式な役員会議の席上でミ−の次期会長の“正当性”を主張するだけの事デ〜ス。その時に後悔しても遅いデ〜ス。」 「大変失礼ですが・・・、おそらくあなたの主張は役員達に聞き入れられないと思いますが、フェニックス様。」 SIT!一言そう呟いたフェニックスは部屋を出て行った。 フゥ−、約1時間フェニックスの話に付き合わされたリリアはソファに座り直して呼吸を整えた。 (しかし・・・、今日の話を聞いているとフェニックス様がクロフォ−ド家を追放された理由が分かる気がするわ・・・) コンコン、ドアがノックされた。 「どうぞ。」 リリアが声をかけた。 「失礼いたします。」 部屋に入って来たのはリリアと全く同じ顔をした女性、イリア・バルバロッサだった。 「お姉さ・・・いえ、室長。」 「フェニックス様は?」 妹の言葉の訂正を聞き流したリリアは質問した。 「お帰りになられました、相当な剣幕でしたが・・・。」 「でしょうね、でも我々ととしてもああ言うしかないし・・・。」 「グリフォン様が1時間後にこちらにいらっしゃるそうです。」 「わかりました。ではそれまで私の部屋でコ−ヒ−でも・・・」 「ハイ、お姉さま。」 「噂通り、なかなか手強い女ですネ〜。リリア・バルバロッサ・・・。」 I&I社を後にしたフェニックスは近くにある高級マンションの駐車場に車を乗り付けた。 「お帰りなさいませ、フェニックス様。」 マンションの入り口を警備していた黒いス−ツの男達がフェニックスに近付いてきた。 「何かありましたカ?」 「いえ、変わりありません。フェニックス様の方は?」 「やはり多少手荒な事をしなければいけないようデ〜ス。その時の準備を整えておくように・・・。」 「ハッ!」 それだけ言うとフェニックスは自分の部屋へと向かった。 バタン!自分の部屋へと入ったフェニックスはベッドの上に寝転んだ。 (もうすぐこんな生活ともサヨナラデ〜ス。必ずやクロフォ−ド家に復帰し、I&I社を手に入れてみせマ〜ス・・・) ・・・魔人を目覚めさせよ・・・ (ンッ?) フェニックスは体を起こした。声がしたようだが部屋には自分以外には誰もいない・・・。 (今のは一体・・・) ・・・お前は私に選ばれた暗黒の王・・・ 「誰デ〜ス!」 フェニックスはベッドの下から銃を取り出した。 ・・・私はお前の脳に直接語りかけている、私の姿はお前には見えん・・・ ズキュ−ン!!!フェニックスが銃を1発、天井に向けて発射した。 ・・・私に協力するのだ・・・ ・・・そうすればお前は強大なる“闇の力”を手に出来るのだ、そのようなオモチャの力ではなく・・・ ・・・かつてお前の兄、ペガサス・J・クロフォ−ドが手にした“闇の力”をな・・・ 「兄が手にした・・・闇の力?」 その言葉がフェニックスの見えない相手への恐怖心を和らげた。 ・・・私はある目的を達成する為にお前の力が必要だ・・・ ・・・3枚の神のカ−ドを生み出したペガサス・J・クロフォ−ドと同じ血を持つお前の力がな・・・ フェニックスは銃を下ろした。 ・・・これは契約だ、お前はI&I社を手に入れる・・・ 「I&I社を・・・ミ−の手に・・・。」 ・・・私は私の目的を果たす・・・ 「誰なのデ〜ス?」 ・・・私か・・・ フェニックスの目の前に黒い霧のようなモノが出現した。その黒い霧はやがて人の上半身に近い形を形成していった。 ・・・私は闇の世界の住人、ミスト・・・ 「闇の世界の・・・住人?」 ・・・私の目的はお前に3枚のカ−ドを作ってもらう事・・・ 「3枚のカ−ド?」 ・・・かつてお前の兄が生み出した3枚の神のカ−ド・・・ ・・・それと対極の存在である3枚の“魔人カ−ド”を生みだし、6枚のカ−ドを手にするのが私の目的・・・ 「それをミ−が?」 ・・・私の目的が達成された時、同時にお前は兄、ペガサスを越える事が出来るのだ・・・ 「兄を超える・・・ミ−が。」 ゴトン!フェニックスの手から銃が落ちた。その表情にはもはやミストに対する恐怖は無かった。 「協力しマ〜ス。私は兄を超えてみせマ〜ス。私の実力を亡き兄に、I&I社に、そしてクロフォ−ド家に思い知らせてやるのデ〜ス。」 (・・・簡単なモノだ、やはり心の弱い人間を扇動する事は容易い・・・) 闇の住人・ミストは、自分の目の前で狂喜しているフェニックスを見てそう思った。 (・・・まぁ私の目的が達成されれば、この男が闇に喰われようがどうでもいい事だ・・・) 「フェニックス様!いかがなさいました?」 部屋の入り口に数人の部下達が集まってきた。フェニックスの部屋からの銃声を聞きつけたようだ。 「何でもありまセ〜ン。持ち場に戻るのデ〜ス。」 「し、しかし・・・。」 「何でもないのデ〜ス。下がるのデ〜ス。」 フェニックスがそう言うと、部下達は不信に思いながらも部屋の前から遠ざかっていった。 「で、私は何をすればいいのデスカ?」 一瞬、ミストの目が光った。 ・・・しばらくの間、私がお前の身体を借りる・・・ そう言うとミストがフェニックスの前から消えた、しかし次の瞬間! 「What!」 フェニックスの背後に回ったミストがフェニックスの背中に腕と思われる部分を突き入れた。 ・・・実際に魔人カ−ドを生み出すのはお前を操る私という事になる・・・ 「アッ・・・アッ・・・。」 フェニックスの小さなうめきが部屋中にこだまする。 ミストの黒い霧状の身体がフェニックスの身体に全て入っていった。 ドサッ! 糸の切れたマリオネットのようにフェニックスが床に崩れ落ちた。 ・・・・・・・・・・。 ゆっくりと床からフェニックスが身を起こした。 その目は・・・、妖しげな赤い光を放っていた。 「・・・では始めようか、魔人カ−ドを生み出す為の“血の儀式”を・・・。」 そういうとフェニックスの姿をした存在は部屋を出て行った。 どれくらいの時間が経ったのだろう・・・、闇遊戯は闇の中を歩いていた。 「ココは一体?」 見渡す限りの闇・・・、ココは何処なのか? (オレの記憶の中?それとも・・・) ヒョ〜ヒョヒョヒョ〜 遊戯は足を止めた、前方の闇から誰かが近付いて来る・・・。 (あの笑い声は?) 闇の中から少しずつ姿を現した人物・・・、インセクタ−羽蛾! 「久しぶりですね〜遊戯。」 「羽蛾、こんな所でお前に出会うとはな。」 「ヒョヒョヒョ、オレはお前に復讐する為に新たなインセクト・デッキを完成させた!」 「新たなインセクト・デッキだと?」 羽蛾が手をかざした、羽蛾と遊戯の間にデュエルテ−ブルが出現した。 「デュエルだ、遊戯!」 羽蛾が席に付いた。 「フッ、受けて立つぜ!羽蛾。」 遊戯も席に付いた。 「デュエル!」 2人がデュエル開始を宣言した。 「ヒョヒョ、オレの先行だ!」 羽蛾がデッキからカ−ドを引いた。 「ダ−ク・ワ−ム(攻撃力1000・守備力500)召喚、カ−ドを1枚伏せてタ−ン終了!」 (攻撃力1000のモンスタ−を攻撃表示とは・・・) 「オレのタ−ン!」 遊戯がデッキからカ−ドを引く。 「2枚のカ−ドを伏せて、磁石の戦士γ(攻撃力1500・守備力1800)召喚!ダ−ク・ワ−ムに攻撃!」 磁石の戦士γのマグネットパンチがダ−ク・ワ−ムの身体の中心を打ち砕いた。 「ヒョヒョヒョ、ダ−ク・ワ−ムの効果発動!」(LP3500) 「何ッ!」 何と破壊されたはずのダ−ク・ワ−ムが2体の小さなダ−ク・ワ−ムとなって場に残っていた。 「ヒョヒョ、ダ−ク・ワ−ムは攻撃表示状態で破壊された後、攻撃力・守備力が半分になった2体のダ−ク・ワ−ムとして場に残る事が出来るのだ!」 「その為にわざと攻撃表示で。」 「ヒョヒョヒョ、まだまだオレのインセクト・デッキはこんなモノではないぞ!」 遊戯はタ−ン終了を宣言した。 「ヒョヒョ、オレのタ−ン!」 羽蛾がカ−ドを引く。 「1枚伏せカ−ドを追加し、デス・スパイダ−(攻撃力1300・守備力900)を召喚、2体のダ−ク・ワ−ム(攻撃力500・守備力250)を守備表示にしてタ−ン終了!」 (オレの磁石の戦士γより攻撃力の低いモンスタ−をまた攻撃表示だと?) 「オレのタ−ン!」 遊戯がデッキからカ−ドを引いた。 「場の磁石の戦士γを生贄に捧げ、暗黒魔族ギルファ−・デ−モン(攻撃力2200・守備力2500)召喚!」 遊戯の場に巨大な羽根を持つ上級悪魔族モンスタ−、ギルファ−デ−モンが召喚された。 「ギルファ−・デ−モン!デス・スパ−ダ−に攻撃!!」 ギルファ−・デ−モンがその巨体を起こした。羽根を、そしてその巨躯を大きく広げた。 暗黒魔火葬!!!フィ−ルドから吹き上がる暗黒の炎がデス・スパイダ−の身体を焼き尽くす。 「ヒョヒョヒョ、ムダだ!伏せカ−ド発動!」 羽蛾は場の伏せカ−ドを発動した。 「罠カ−ド、エスケ−プ・ストリングス(脱出の糸)!」 デス・スパイダ−の口から黒い糸がギルファ−・デ−モン目掛けて吐き出された。ギルファ−・デ−モンが黒い糸に捕らわれた次の瞬間! 「何ッ!」 何と暗黒魔火葬で焼かれているのがギルファ−・デ−モンに入れ替わっていた。 グゥオオオ!!!自分で放った暗黒魔火葬に焼かれたギルファ−・デ−モンが消滅した。 「ヒョヒョ、これは攻撃表示のデス・スパイダ−を囮に攻撃モンスタ−を自滅させる罠カ−ド。当然この罠カ−ドにかかったギルファ−・デ−モンの攻撃力分のダメ−ジは、お前が受ける事になる。」 「クッ!」(LP1800) 「ヒョ〜ヒョヒョヒョ。これでお前の勝ち目は無くなったな〜、遊戯。」 (確かにギルファ−・デ−モンは破壊された。オレの場にモンスタ−はいない・・・) 「タ−ンを終了するぜ。」 「ヒョヒョヒョ、お前の場には守ってくれるモンスタ−はいない。最も・・・。」 そう言うと羽蛾はデッキからカ−ドを引いた。 「このタ−ンでオレが召喚する最強のカ−ドの前ではどんなカ−ドも無力と化す!」 「最強のカ−ドだと!」 「見るがいい、遊戯!神のカ−ドに匹敵する能力を持つ“魔人カ−ド”を!」 羽蛾の場の3体のモンスタ−が生贄に捧げられた、同時に羽蛾の場には巨大な魔法陣が出現した。 「ヒョ〜ヒョヒョヒョ。降臨せよ!魔人ベルゼブブ!!!」 魔法陣が妖しい光を放ち出した、黒い煙が立ち込め始めてきている。 「魔人・・・ベルゼブブ・・・。」 やがて魔法陣上に巨大な蝿の魔人、ベルゼブブ(攻撃力4000・守備力4000)が、その邪悪な姿を現していた。 「ヒョ〜ヒョヒョヒョ、これで終わりだ!遊戯!」 ベルゼブブが3つの黒い炎の火の玉を出した。 「魔人ベルゼブブの攻撃!」 ベルゼブブ・ヘル・ブレイズ!!! 「クッ、伏せカ−ドオ−プン!」 遊戯は場に伏せられていたカ−ドを発動した、魔人ベルゼブブが六芒星の魔法陣に捕獲された。 「六芒星の呪縛!これで魔人ベルゼブブの動きを封じるぜ!」 しかし・・・。 「ヒョ〜ヒョヒョヒョ。言ったはずだ、遊戯!魔人カ−ドは神のカ−ドに匹敵すると。」 ジャキ−ン!魔人ベルゼブブを捕らえていた六芒星がかき消された。 「神と同様、魔人には罠カ−ドは通用しない!ヒョ〜ヒョヒョヒョ。」 「オ、オレの負けか・・・。」 遊戯目掛けて3つの黒い火の玉が迫る・・・。 ヒョ〜ヒョヒョヒョヒョヒョ・・・。 ガバッ!目を覚ました遊戯はベッドから身体を起こした。 「・・・ゆ、夢?」 カ−テンの隙間から朝日が射している、もう朝のようだ。 (しかし・・・すごい夢だった。でももう1人のボクが・・・) ベッドから出た遊戯はカ−テンを開けた。そこには! 「ウワァ〜!!!」 何と窓の外に虚ろな目をした羽蛾が立っていた。 「羽蛾クン!」 遊戯は窓を開けた。 「・・・武藤遊戯・・・。」 羽蛾が喋りだした、しかし羽蛾自身の声ではない。 「・・・さっきの夢は私からのほんの挨拶代わりだ・・・。今度は本物の魔人がお前の前に姿を現す・・・。」 「お前は、羽蛾クンをこんな目にあわせているお前は一体?」 意識の無い羽蛾の身体中から黒い煙が噴き出し始めた。 「・・・私か・・・、いずれ会う事になるだろう・・・。お前が3枚の神のカ−ドを持つ限り・・・。」 ドサッ!黒い煙が羽蛾の身体から離れた、と同時に羽蛾の身体が糸の切れたマリオネットのように屋根の上に崩れ落ちた。 「羽蛾クン!」 遊戯は屋根の上を滑り落ちていこうとしている羽蛾の腕をつかんだ。 「ンンッ!」 遊戯は歯を食いしばって羽蛾を自分の部屋まで引き上げた、羽蛾はまだ意識を失ったままだ。 遊戯は床に倒れこんだ。 (一体何者なんだ?こんな事が出来るなんて・・・) (そしてあの夢に出て来た魔人・・・) (何が始まるというのだろう・・・) |