<小説> 闇を制する者
前編


TONさん作
作成:02/12/08


【第一幕・魔人転生】

ここは・・・?
暗がりの中男の目が覚める・・・
男は両手両足を拘束されており身動きすらできなかった

「気がついたかね?」
白衣を着た一人の者が男に話し掛ける
「・・・ここはどこだ?それに何故私は拘束されているのだ」
「ホッホッホッ・・・、その質問に答える義務はないのぅ・・・」

次第に視覚がはっきりとしてくる−
どうやら手術台か何かの上に男は乗せられている様だ
「目が覚めたらしいな・・・」
「これはこれは、ハ・デス様・・・・ようこそ我が研究所へ」
「下らん挨拶は良い、魔導サイエンティストよ、実験のほうは順調か?」
「もうじきでございますよ。後はこの男に・・・」

(何を言っているんだこの男は?それにハ・デス・・・冥界の魔王が目の前にいるということはここは冥界か?)
男はひたすらに嫌な予感がしてならなかった・・・


−数刻後
そこに男の姿は無く変わりにこの世のものとは思えぬ魔人がいた・・・

「ぐぅぉぉぁぁぁぁぁああ!!」
「ホッホッホッ・・・ついに、ついに完成したぞ!!究極にして最強の悪魔・・・魔人 ダーク・バルターが!!」

「完成したか魔導サイエンティストよ、封印を解く鍵が・・・」
「ぐぉぉぉぁぁぁああ!!」
「ふん、まだ制御はしきれてないのか・・・どれ」
そういうとハ・デスが両手を上げ何かを操るような手付きを取る
「うぅ・・・ぐぅぅぅぅ」
ダークバルターは次第に意識をハ・デスに乗っ取られていく・・・
「くくく、我が冥界流傀儡術の前に操れぬものは無い」
ダークバルターは次第に意識を乗っ取られる中、呟いた
「ィ・・・リ・・・−」



−竜谷
一匹の紅き巨体の竜が屍と化した龍を貪る・・・
竜族の長の持つ超再生能力によりタイラント・ドラゴンが蘇る・・・


しかし、ギルフォード達人間は竜の逆鱗に触れたことにまだ気付かなかった・・・
そして、ハ・デス達の侵攻のことも・・・


【第二幕・楔】

王宮地下、ここには封印が施されていた
王族の者しか知らず、その王族でさえ近づこうとしない場所―
地下を封鎖する扉の奥から風音とも取れる音が聞こえてくる―地下であるにも関わらず・・・

王族達は王位継承の際にソロモンの律法書という書物を一緒に継承する
この書には王としての心構え、他国との外交等が書かれている
ただ最後のページにはこの様な事が書かれている―

王位を継ぎし者に告ぐ―地下の封印を決して解く事無かれ
―彼災いを示すモノ也
彼の封印解かれし時、世は混沌の世界へと変貌するであろう・・・
絶望と不幸を招く神封印されし者の・・・を再び世に出さぬ様ここに記しておく



―同時にこれは悪魔達にも継承されていることであった・・・
ハ・デスは自分の欲のためだけにこれを解こうとしていたのだ



―王宮
光の騎士団帰国後、王宮は次第に復旧されていた
「このままだと思ったより早くに復旧できそうですね」
「うむ、ひとえに市民達の協力があってこそだな」
フリードコマンド・ナイト王宮兵・市民達と一緒に王宮の復興作業をしていた
「しかし、気になるな・・・」
「・・・ハ・デスのことですか?」
「・・・このまま終るとは思えぬのだが・・・
まぁ今は来ぬ事を願うしかないがな」
「そうですね・・・大事な人を失う思いをこれ以上したくはありませんしね」
コマンド・ナイトはただ一人のことを考えていた・・・


―冥界
「時は来た――今こそ王宮へと攻め込もうぞ!封印を解き、この世に混沌の世界を!!」
『ウオオォォーー!!』

ハ・デスの一声に魔物達が雄叫びを上げる―
そう・・・決戦の時が来たのだ――


さらに王宮へ一匹の巨大な影が刻々と近づいていた―
紅き巨体の竜が・・・


【第三幕・決戦の時】

―王宮
「大変です!フリード将軍、悪魔達が攻めてきました!」
「なんだと!!」
王宮兵の報告にフリードは頭を抱えた
(何故このタイミングで攻めてくる・・・ハ・デスよ)
大革命の時・ギルフォード将軍の遠征時・・・チャンスはいくらでもあったというのに
「ついに来ましたね・・・フリード将軍」
「よし!こちらもいくさの準備をするぞ」
「了解しました!」


投石部隊!できるだけ相手の数を減らせ!
光の騎士団!残りの敵を各個撃破!」
フリードの指示に部隊が動く―

「フフフ・・・無敗将軍と呼ばれるのも今日が最後だフリードよ。
ニュードリュアダーク・ジェロイドよ、・・・・行け!」
投石部隊の攻撃をかいくぐり2種の悪魔が地上へ降り立つ
「先へは行かせん!」
光の騎士団のジャックス・ナイトクイーンズ・ナイトキングス・ナイトが悪魔達に飛び掛る
しかし―ダーク・ジェロイドが不気味な光を放ったと思ったら、三銃士達の動きが鈍くなる
「何事!」
「動きが・・・体が上手く動かない・・・」
その隙に2種の悪魔が襲い掛かる!


―刹那!七つの武器を持つハンターが対悪魔族専用の武器を取り、悪魔達を切り刻む―
「ぐぅぅぉぉぉぁぁぁ!!」
ニュードリュアが不気味な声を上げると、辺りにいた戦士たちが悲鳴をあげる―
ニュードリュアが死に際に放った叫びが呪いとなり、降りかかったのだ

「厄介な悪魔達だな・・・」
フリードは舌打ちをした、向こうの方が一枚上手かもしれない、そう思ったからだ


戦況は悪魔達がやや押していた―
この状況を見てハ・デスが手を打った
(今がチャンスだな・・・ダーク・バルターを進入させるか)
ハ・デスの切り札―ダーク・バルターが王宮の地下を目指して潜り込む


―封印を解かんがために・・・


―王宮・作戦室
「アレク・・・?近くにいるの―?」
コマンド・ナイトは今亡き英雄に呼ばれた気がして、その方向へ向かった―


【第四幕・三軍激突】

「フリード様、大変です!」
青い忍者が慌てて報告に入る
「どうした?申してみよ」
「はっ!竜谷より一体の巨竜が飛来しております!」
「なんだと!!」
ここにきてさらに敵が増える―
ただでさえ悪魔軍に押され気味だというのに・・・
「まさか、あのドラゴンが生きていたというのか!」
その場に居たギルフォードも動揺を見せた
確かに倒したはず――そう思っていたからだ
「フリード様!私がドラゴンの方へ向かいます!」
「・・・いや、ギルフォード団長、貴公は悪魔達の殲滅に当たってくれ」
「しかし!竜谷のドラゴンが攻めてくるというのは私の失態―」
「ギルフォードよ!今は自身のプライドのことより先に考えることがあるであろう!・・・ここはバスター・ブレイダー団長に任せてギルフォード団長は悪魔達の方へ向かってくれ」
「・・・わかりました、バスター・ブレイダー後は頼む」
「任せておけ、この竜破壊の証に賭けて倒して見せる!」
そう言うとバスター・ブレイダーとギルフォードは逆の方向へと走り出した―


―前線
「フフフ・・・奴らもかなり疲労の色が見えてきたな、そろそろ精鋭部隊を送るとしよう」
そう言ってハ・デスが右手を上げ合図を送る
レッド・サイクロプスギル・ガース達よ、行け!
使い魔達よそれを援護しろ!!」
そう言うとハ・デスの上げた右手からハ・デスの使い魔が現われる―


「ちぃ・・・まだ来るのか!」
前線でブレイド・ナイトが孤軍奮闘の活躍を見せているとさらに敵が増える―
(・・・ここまでか)
ブレイド・ナイトは心の中でそう考えていた――その時
「諦めるな!!ギルフォード団長が時機に来てくれる、それまで持ちこたえるのだ!」
太陽の戦士がブレイド・ナイトを後押しする
「・・・そうだ、まだギルフォード団長がいる、光の騎士団がこんなとこで諦めてどうする!」
ブレイド・ナイトの目に再び輝きが戻る


―王宮内
「どこ?どこにいるのアレク?」
コマンド・ナイトは王宮の奥へと突き進み、ある階段を見つける
「?こんな所に階段なんて無かったはず・・・」
そう思いつつ、コマンド・ナイトは地下への階段を歩き出す―
薄暗い・・・そして冷たい風が頬を打つ―
(?風・・・何故地下の方から風が・・・)

                     
その背後に不気味な影が動く―魔人と化した英雄だった男の姿が・・・

(後編へ続く)