心を通じ合う



坂本竜馬は不思議な魅力を持った人物でした。そもそも敵味方という概念は持っていない。だから、彼の死は西郷隆盛、桂小五郎等倒幕派だけでなく、勝海舟、土方歳三と言った幕府側の人間からも惜しまれたと言われています。そんな、魅力の一端に迫ります。

(1) 立場って、いったい何?
岡田以蔵、彼が刀を抜くことを見た者はいないと言われました。何故ならその瞬間に相手が絶命するほどの刺客でしたから...彼は竜馬の暗殺を金で依頼されました。物陰に隠れて、坂本竜馬が通り過ぎるのを待ちます。そして、後から斬ろうとした時に彼の後姿が大きすぎて斬れなかった。彼は「俺を斬れ!」と竜馬に迫ります。そんな時竜馬は即座に許して、有り金を全部差し出し「金が欲しかったらいつでもやる。困ったことがあればいつでも来い!」と言いました。それ以後、以蔵は多くの刺客に狙われる竜馬の影となって、彼を忠実に守りぬいたのです。逆のエピソード...彼が幕府を倒すと心に誓った時、最初に暗殺を企てたのが、幕府の精神的支柱であった勝海舟でした。屋敷に忍び込み「お命頂戴いたす!」「おぅ!お前さんが竜馬さんか...まあ、俺の命はいつでもやるからまずは話を聞かないか?」その後、西洋の列強、今後の日本のことを熱心に聞き、勝海舟に敬服し、身を委ねました。彼の素直さ、隠さない明るい性格で心を伝え合ったのです。

(2) 相手を尊重する。

彼の偉大さは、どんな人間に対しても、向き合った時は立場、身分、性格などの色眼鏡で見ず。一個の人間として見たところにあります。そして、相手のいうことを否定せずに全て吸収する。自分で消化した後に、意見、感想を返す。初対面のどんなに気難しい人間でも、彼に引き込まれるように親しくなったそうです。そして、会った人間は竜馬の中に、自分の心の一部、分身を感じたと言われています。大きいですねぇ...